
予算策定や需要計画、人員計画など、多くの企業で
「この業務は、あの人しか分からない」という状態が当たり前になっています。
例えば、
担当者が休暇に入った途端、
「この数字、どうやって作っているんでしたっけ?」と周囲が困る。
引き継ぎをしようとしても、
「ファイルはあるけれど、どこをどう見ればいいのか分からない」。
こうした状況は、決して珍しいものではありません。
ここで重要なのは、属人化は“誰かの能力不足”で起きているわけではない、という点です。
むしろ逆です。
経験豊富な担当者が、
・過去の経緯を理解し
・関係部門と調整し
・例外を吸収しながら
業務を回している。
その結果として、業務がその人に集中していきます。
では、なぜ計画業務はここまで属人化しやすいのでしょうか。
計画業務は、単なる集計作業ではありません。
例えば売上計画であれば、
・どの実績を基準にするのか
・一時的な特殊要因をどう扱うのか
・どの前提を優先するのか
・どこまで保守的に見るのか
といった判断が常に発生します。
これらはマニュアル化しづらい“思考のプロセス”です。
そのため、
・ロジックは頭の中に残る
・判断の根拠が言語化されない
・経験値がそのまま品質になる
という状態になりやすいのです。
結果として、
「作業は共有できるが、判断は共有できない」
という構造が生まれます。
多くの現場では、前年のファイルをコピーして計画を更新します。
一見効率的ですが、その中で少しずつ
・計算式の追加
・補助シートの増加
・例外処理の手入力
・部署独自の調整ロジック
が積み重なっていきます。
気づけば、
「この数式、なぜこうなっているんでしたっけ?」という状態が生まれます。
ファイルは存在しているのに、中身は説明できない。
これが、ブラックボックス化の始まりです。
計画業務では、前提変更や突発対応が頻繁に起こります。
・組織変更
・新規事業の追加
・特定顧客の条件変更
・経営方針の修正
これらに対して、
「とりあえず今回だけ調整しよう」
と対応していくうちに、例外処理が増え、全体設計は徐々に複雑になります。
そしてその処理方法は、担当者の中に蓄積されていきます。
属人化は、一度の判断で起きるのではなく、小さな例外の積み重ねで進行します。
属人化は、突然起きるものではありません。
いくつかの兆候があります。
・最終調整は必ず特定の人が行う
・担当者不在時に作業が止まる
・他の人が触ると不安になる
これは典型的なサインです。
・マニュアルはあるが実務と合っていない
・計算ロジックの説明がない
・更新履歴が追えない
形式上の資料があっても、実務で使えなければ意味がありません。
・前提の置き方が違う
・集計方法が統一されていない
・数値の粒度が揃っていない
一見問題なく回っていても、担当変更のたびに再教育が必要になります。
担当者が在籍している限り、業務は止まりません。
・締切は守られる
・数字は提出される
・会議も進む
そのため、
「特に問題はない」と判断されがちです。
しかし、
・異動
・退職
・長期休暇
のタイミングで初めて、リスクが一気に表面化します。
属人化が進んだ担当者は、
・複雑な調整を素早くこなす
・過去経緯を把握している
・数字の違和感に気づく
その結果、「あの人がいるから大丈夫」という安心感が生まれます。
しかしそれは、個人の能力に依存している状態でもあります。
担当変更のたびに、
・業務理解に時間がかかる
・検証工数が増える
・一時的に計画精度が落ちる
という影響が出ます。
修正依頼が特定の人に集中し、
・変更反映に時間がかかる
・意思決定が遅れる
・現場との調整が滞る
といった問題が発生します。
ブラックボックス化が進むと、
・どこが非効率なのか分からない
・触るのが怖い
・「今は回っているから」と先送りされる
結果として、同じ運用が繰り返されます。
ここまで見てきた通り、属人化は個人の問題というより、
業務の進め方や運用のあり方の中で自然に生まれていくものです。
重要なのは、「誰ができるか」ではなく、
どうすれば再現できる状態にできるかという視点です。
そのためには、
といった選択肢を整理する必要があります。
次の記事では、
属人化を解消するための「運用改善」と「ツール活用」の選択肢を比較しながら、
自社に合ったアプローチの考え方を整理します。
Copyright © DIGITAL VORN CO.LTD. All Rights Reserved.